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「ゲヘイロ(GUERREIRO):旱魃の地の戦士たち」
はじめに
2002年八月、自らの研究するコーコ(COCO)を実際に自分の目で見るべく私はアラゴーアス州の州都マセイオーを訪れた。その時のフィールドワークに関しては「ブラジル・ポルトガル語文法の世界:会話を通したブラジル文化散策の旅」(P188)/田所・青木共著/国際語学社」に掲載しているのでここでは省略する。その地で偶然目にしたのがゲヘイロ(GUERREIRO)と呼ばれるアラゴーアス州独特の民衆劇である。北東部の民俗音楽の研究者として著名なハニルソン教授と話をした際に、一も二もなく私の目を奪ったのがそのきらびやかな衣装であった。
ゲヘイロ(GUERREIRO):旱魃の地の戦士たち
ゲヘイロは、1927年から1930年にかけてアラゴーアス州で生まれたクリスマスを祝う民衆劇の一つである。(現在はクリスマスに限らず、大きな祝い事やイヴェント等でも演じられることがあるそうだ)この民衆劇は、北東部に伝わるヘイザード(Reisado)やアウト・ドス・カボクリーニョス(Auto
dos Caboclinhos)、シェガンサ(Chegança)、パストリス(Pastoris)などの様々な民謡や民衆劇が合わさって誕生したとされる。ゲヘイロは、他の民衆劇よりもより大規模で、加えて華麗で個性的な衣装や飾りつけ、そして美しい歌が特徴的である。きらびやかな衣装の中でも一際目立つのはcapela(小教会)と呼ばれる、独特の帽子である。ガラス玉、銀のテープ、真珠、鏡、石など多くの装飾品によって飾られたこの帽子は、教会、王冠、宮殿を模倣した作りになっており、最大5キロにもなる。それらはあらゆる悪を追い払い、幸運を呼び寄せると言われる。劇ではアコーディオン、パンデイロ、タンボリン、トライアングル等が用いられ、それに合わせて人々は歌い踊る。
この民衆劇には多くの登場人物が存在する。王、女王、将校、メストレ、二人の大使、将軍、女神、インディオ、美しい妖精ペリーとその召使たち、リラ、二人の魔法使い、二人の道化師、人魚、戦士など多種多様である。
途中、ドラマチックな音楽にのせて、インディオ、ペリーが剣を手にしてゲヘイロたちと戦うシーンは、この劇を彩る重要なクライマックスシーンの一つである。ペリーは捕らえられるが、再び解放され、最後に戦争の終わりを告げながら女王と踊る。
もう一つの重要なシーンは、王に嫉妬した女王がリラに刺客を送り出すシーンである。女王によってリラを殺すように命じられたカボクロ(白人とインディオの混血)は、リラに恋し、彼女を助け出そうとする。しかし、リラに結婚を拒絶されたカボクロは怒って彼女を殺してしまう。最後に、リラは魔法使いの魔法によって蘇えり、皆が歓喜でリラの復活を祝い踊ってフィナーレを飾る。
ブラジル国内には、ゲヘイロをはじめこのような種類の民衆劇があまたに存在する。このこと自体ブラジルという国が文化的多様性に富んでいることを雄弁に物語っている。中でも、北東部はブラジル国内でも民族音楽や大衆文化が多数残存する文化的宝庫である。しかしながら、大部分が年中旱魃の北東部に暮らす人々の生活は決して楽なものではない。そんな中、彼らは歌や踊りを通して自ら生きる悦びを見い出し、日々の生活を謳歌している。実際にゲヘイロを目にした私は、ゲヘイロを演じる彼らの心がそのきらびやかな衣装や飾り付けに勝るとも劣らずはずんで、喜びに満ち溢れていることに気付いた。
いち日本人として私はこうした『旱魃の地の戦士たち』がくり出す豊かな歌や踊り、そしてその表現力に感動と興奮を禁じ得なかったと共に、ストレートに人生を楽しむすべを知る彼らにいささかの嫉妬さえ覚えた。
BIBLIOGRAFIA(参考文献)
Gustavo Cortes/Dança, Brasil! FESTAS E DANÇAS
POPULARES/Editora Leitura/2000
Luís Da Câmara Cascudo/Dicionário do Folclore
Brasileiro/global EDITORA/2001
Enciclopédia da música brasileira/ART EDITORA
Itaú cultural/1998
2003年10月10日
研究員 青木義道
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