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ポルトガル語・文法ミニ講座
−この魅力溢れる大国・ブラジルを知るために−
日本と韓国で共同開催された2002年サッカー・W杯と前後して、ポルトガル語の文法書や単語・会話集などの書籍を、大型書店のみならず、地方の中型書店でも数多く見かけるようになりました。それには、セレソン(Seleção)と呼ばれるブラジル代表チームの活躍が大きく影響していることも一つの要因と考えられるでしょう。
さらに、昨秋以降から、雑誌・テレビなどでパンタナル(Pantanal)に関する特集がたくさん組まれています。パンタナルとはブラジル中西部に広がる大湿原のことで、本州とほぼ同じ大きさです。朝日新聞・夕刊には、2月19日と同26日の2回にわたって「エコツーリズムのススメ」のコーナーで、世界最大のネズミの仲間であるカピバラ、トゥユユのヒナの写真と共に紹介されていました。今、まさにパンタナルは静かなブームを引き起こしていると言えます。
また、今年4月で開設3周年を迎えるブラジル民族文化研究センターのHPもアクセス数4万件を超え、掲示板にも様々な人たちがメッセージを書き込んでいます。各研究員によるエッセイ・論文には、ブラジルの文化、音楽に関することなどが中心に掲載されています。今後、さらにアクセス数を伸ばすためには、更新回数を増やしていくということは言うまでもありません。
そこで、もっとブラジルを知るためにポルトガル語を勉強したい人や、すでに既刊の文法書を終えてしまったと言う人のために、ワンランク上の文法事項を学ぼうというのが、この『ポルトガル語・文法ミニ講座−この
魅力溢れる大国・ブラジルを知るためにー』です。基本的なものから、ネイティヴでもよく間違えるものまで、毎回違ったテーマで、できるだけ平易な例文で説明していきたいと思っています。それに加えて、この国の文学を愛する者の一人として、時には詩や小説の一節も紹介したく考えています。
それでは、記念すべき第一回は、方向を表わす前置詞a(〜へ)をメインテーマに、動詞chegar(着く、到着する)とir(行く)を取り上げて、説明しましょう。
下の文を見てください。どこが(文法的に)間違っているかわかりますか?
O ônibus chegou em Niterói. バスはニテロイに着いた。
一見、問題ないような文に見えます。前置詞「em + 場所」で、「〜に」を意味するからです。しかし、動詞chegarは、前置詞aを要求して、「〜に着く」という意味になります。paraを使うこともできますが、chegar
a が文法的に最も正しい言い方なのです。上の文章でも、通じないと言うことはありませんし、白水社『現代ポルトガル語辞典』422ページにもこの用法が載っています。ただ、やはり俗語的な言いまわしなので、作文の授業などでは次ぎのように書いたほうがいいと思います。
O ônibus chegou a Niterói.
chegar a の他にも、dirigir-se a (〜に向かう、行く)、levar a (〜に運ぶ、連れていく)、voltar
a (〜に戻る)、ir a (〜に行く、赴く)、retornar a (〜へ戻る、帰る)などがあります。例文を見てみましょう。
Os rapazes dirigiram-se ao colégio.
少年たちは学校に向かった。( Aurélio, 688p )
Minha mãe levou o bolo à festa.
僕のお母さんはケーキをパーティーに持って行った。
Fabio voltará ao Rio de Janeiro amanhã.
ファビオは明日、リオに戻るでしょう。
Vamos retornar ao início de "
Iracema ".
『イラセマ』の冒頭部分に戻りましょう。
ブラジル・ロマン主義の中でも、インディアニスタ小説3部作(『グアラニー族 ( O Guarani )』、『イラセマ
( Iracema )』、『ウビラジャーラ ( Ubirajara )』)で光芒を放つ、ジョゼー・デ・アレカール(
José de Alencar )の『羊の足 ( A pata da Gazela )』には、前置詞aの代わりにparaを使った、このような文もあります。
As duas senhoras dirigiram-se para
a casa do Masset.
二人の貴婦人がマセの家に向かった。
最後に、動詞irについて触れておきましょう。この動詞は『現代ポルトガル語辞典』684ページでも説明されているように、あとに、aを持ってくるか、paraを持ってくるかで、微妙な違いが出ます。つまり、ir
paraの時は、行き先にしばらく滞在する、長い時間いる、または、帰って来るのに遅れる、という意味が含まれることがあります。例文で確認してみましょう。
Vou ao cinema. 僕は映画館に行きます。
Vou ao banco. 僕は銀行に行きます。
上記の文では、行き先は映画館、銀行であって、普通これらの場所に「滞在する」ということはないでしょう。いくらブラジルの銀行で、毎日長蛇の列で待たされると言っても、1時間から2時間。映画館にしても、同様です。それに比べて、次ぎの文はどうでしょう。
Natumi vai para São Paulo para estudar
a música brasileira.
夏美はブラジル音楽を勉強するためにサンパウロへ行きます。
Masaki foi para Kashima há um
ano.
正樹は1年前に鹿島に行った。
この2つの文は、前の文と違って、行き先に「しばらくの間いる」というニュアンスが含まれています。ブラジル音楽を勉強するのに、数時間だけサンパウロにいるということは考えにくいでしょうし、2番目の文は、過去形になっていますが、鹿島に行って、すぐに帰って来たということでないことがわかります。
この使い方は必ずしも厳密に区別しているわけではありませんが、このような微妙な差があるということは、頭の隅に置いていても損はしないでしょう。
参考文献を挙げておきます。
Cegalla, Domingos Paschoal. Dicionário de
dificuldades da lingua portuguesa. 2.ed. rev. e ampliada.
Rio de Janeiro, Nova Fronteira, 1999.
Cunha, Celso. Nova gramática do português
contemporâneo. 3.ed. Rio de Janeiro, Nova Fronteira,
2001.
Ferreira, Aurélio Buarque de Holanda. Novo
Aurélio do Século XXI : o dicionário da
lingua portuguesa. 3.ed. totalmente revista e ampliada.
Rio de Janeiro, Nova Fronteira, 1999.
Paschoalin, Maria Aparecida. Gramática : teoria
e exercicios. São Paulo, FTD, 1996.
Rodrigues, Vera Cristina. Dicionário Houaiss
de verbos da lingua portuguesa. Rio de Janeiro, Objetiva,
2003.
Squarisi, Dad. Dicas da Dad - português com
humor. 8.ed. São Paulo, Contexto, 2002.
---------------. Mais Dicas da Dad - português com
humor. São Paulo, Contexto, 2003.
今回は、Dad Squarisi著『Dicas da Dad - português com humor』、57〜58ページを参考にしました。
2004年2月27日
研究員 岐部雅之
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