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7.皆で渡れば怖くない
長くとも四十(よそじ)に足らぬほどに死なんこそ、めやすかるべけ―――『徒然草』で僧兼好は言う。日本の平均寿命男七十六歳、女八十二歳の今日、兼好の意に沿って三十歳代で一人山中に籠もり「つれづれなるままに日ぐらし、硯にむかいて」好きな随筆など書き暮らすわけにはいかぬ。七百年ぐらい昔の平均寿命はごく低かったに違いないから、棄老伝説の「老人」たちは今ならばまだ壮年期にあったのかもしれぬ。ポケベルを腰にさげ、息子におんぶされて山に向かう己が姿、誰が想像できよう。
棄老伝説といえば、何も昔信濃の姥棄て山のそれに限らず、世界中どこにでもある。ギリシャのある島では、すっかり老い込んだと自覚したものは自発的に、まるで祭礼みたいに一緒に集まって冠をかぶり、人参の汁を飲んだ。といっても健康増進のための朝鮮人参などではなく、猛毒性の毒人参。飲むと即死。
閉め切った自室の卓上に「サヨナラダケガ人生ダ」などワープロ打ちの辞世書きを置き、一人旅に発つのは辛いに違いない。その点、かのギリシャ人たちのような集団行動は案外楽しいものかもしれない。
それにつけても我々は、地球上の生物すべてとともに絶滅の寸前にありながら、平気で、あるいは孜々として環境破壊を続けている。地球環境の赤信号も、それこそ皆で渡れば怖くないかのように。
図に乗って饒舌を弄しているうちに、ポルトガルの棄老伝説をご紹介するはずの字数もいつしか尽きた。
主幹 田所清克
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