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8.半分の合羽
ポルトガルでの話。年老いた父親を、慣習に従って山に棄てに行かねばならぬ日が来た。新型のメルセデスで老人ホームに送っていくのとは違う。父を背に山路を登る息子の胸は締め付けられるように痛く苦しく、背の老父の目からも、諦めたとはいえ、とめどなく涙は息子の頭や背にこぼれ落ちたことであろう。
ようやく、山の老人捨て場にたどり着くと息子は着ていた合羽を脱いで老父の前に置いた。
ところで、この『合羽』であるが―――と例によって職業で身にしみついた説明癖が出る―――岩波版国語辞典に、『雨天用マント。ポルトガル語のcapaに由来する』と説明されている。それゆえカタカナ表記してある。その一つ前の見出しの『かっぱ』は河童で、サッカーのアルシンド選手みたいな頭をした想像上の動物。今は合羽の話で河童頭のことはどうでもよろしい。
さて息子が、涙を払い、意を決して立ち去ろうとすると、老父が呼び止めて言った。「この合羽は半分に切ってわしにくれればよい。残りの半分はお前がわしの年になってここに置かれる時に着るがよい。この半分は持っておかえり」
この話は現在使用されているポルトガル語の初等国語読本に載っている。ここを先生はどんな風に小さな児童たちに説明しているのだろうか。
主幹 田所清克
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