|
≫ホーム≫研究・エッセイ≫研究・エッセイ(田所清克)
11.牛、海を渡る
2で貘と牛のことを先送りにしたので忘れぬうちに書きたい。ブラジル発見前から住んでいるのはアメリカ種の貘で、コロンビアからアルゼンチン北部にかけて広く分布する。体長2メートル、身の丈1メートル、体重280キロの図体のくせして果実、木の葉っぱを常食。山林の水辺近くで生活する。
「あんたってアンタね」なんて言われて「うん、ぼかぁぼくさ」などと気取ってばかりいられぬ。アンタは貘のポルトガル語名だが、ブラジルの俗語では『ずる!嘘つき!』の意味がある。
1533年(天文二年)のある日の朝、今のサントス、当時のサン・ヴィセンテの海岸はさながらお祭り騒ぎの賑わいを呈していた。群衆が待ちかまえているのは、ポルトガルからマデイラ島を経てやって来る、貴族マルチン・アフォンソ・デ・ソウザ率いる植民団一行の船であった。1501年発見後、東洋貿易で巨利を獲続け、「気候きわめて良好、もし地上に楽園というものがあれば、それはこの地。されど利用すべき何物もない―――」との探検隊の近視眼的報告で、目前の儲けに狂奔して未来を見ようとしなかった(何もこの国ばかりに限らぬが)。時のポルトガル国王は、徒らに外国人どもにブラジル沿海地方の荒らされるのを黙視できず、ついに一植民団を派遣するに至った。船はマデイラ島から砂糖黍と数頭の牛も運んできた。程なくして、ブラジル北東部臨海地帯の住民たちは文字通り『黄金の中を泳ぐ』ことに相成る。
主幹 田所清克
≫前に戻る ≫ホームへ戻る
|